「先生の研究力―武庫川学篇①」 生活環境学科 鎌田誠史教授(芸術工学) #生存デザイン #島しょ部 #地域景
2026/10/28
最近、よく聞く「スマートシュリンク」を、従前から研究テーマに据えてきた。
いわく「生存のための集落デザイン」。「人口減少や老朽化に直面する地域が、景観と暮らしの尊厳を保ちながら自立して存続できるよう、戦略的に”シュリンク(縮退)”する方法論を探っています」。
初職の設計事務所で沖縄・首里城の復元に携わったのが研究の出発点だ。建物の復元がエリア全体の歴史、文化、環境なしに成り立たないことを身をもって学び、沖縄の各島や奄美大島など、島しょ部の集落を実地調査しながら研究を続けている。
2023年にはエーゲ海に浮かぶパロス島に1年間滞在し、暮らしと自然が溶け合う”地域景”を見つめた。そこで気づいたのが沖縄との相似性。「ともに近世に歴史が始まり、集落の中心に祈りの場が配置されている。石灰岩の地質、厳しい環境に耐えるため、森や地形で集落を囲む”抱護”の思想などすべてが一致していた」。
武庫川流域もまた「水辺」のエリアだ。北は丹波市の水系に由来し、南は大阪湾にそそぐ流域には様々な事情を抱えた市や町が張り付いている。子育て支援や働く場の誘致など、画一的な「地域活性化」の手法が限界を迎えた今、島しょ部で見出した知見を武庫川流域に展開し、それぞれの集落にふさわしい「生存デザイン」を見出すことが、このエリアの持続可能性のカギになる。
あらためて周囲を見渡せば、武庫川流域には本学の多様な研究の足跡があった。「南北には武庫川に沿い、東西には阪神間を軸とするエリアで、本学の教員が数多くの研究を実施している。それらをユニットと捉えることで“武庫川の研究ブランド”として発信するとともに、研究者同士の交流を加速していきたい」。鎌田教授らの呼び掛けに14人もの教員が賛同。「武庫川学」が立ち上がった。
鎌田教授自身は、研究者であり一級建築士でもある。島しょ部でフィールドワークを繰り返す一方で、南船場でのビルリノベーション、芦屋茶屋さくら通りのブランディング、丹波市の地産木材を生かした「木育」など、数多くの産学連携プロジェクトに取り組んでいる。
今、沖縄県南城市に学生たちと行き来し、科研の調査や「シマ護りの家(公民館)」の設計を軸としたムラ護りを通じて、人口減少下でも持続可能なエリアづくりに取り組んでいる。兵庫県の朝来市では、地域×大学×企業のひょうご絆プロジェクトとして、農家の「見えない手間ひま」を可視化する取り組みに挑戦。「ナスときゅうりが実るまで550リットルの水が必要」「アスパラガスは収穫まで1280日かかる」などと成り立ちを表示したうえで、それらの野菜を使った料理を楽しんでもらうポップアップレストラン企画を、企業のデザイナーと協働で予定している。
フィールドワークによる学術研究と、一級建築士としての実践的研究。その両輪走行で、武庫川学のスタートダッシュを牽引する。




