薬学部の中瀬朋夏講師が、糖尿病と乳がんの関係を解明。乳がんの適切な治療法の開発につながる発見です。
2012/06/25
薬学部薬剤学研究室の中瀬朋夏講師が、糖尿病と乳がんの関係についての実証に成功しました。6月9、10両日に開催された「第7回トランスポーター研究会」で、「高グルコース環境における乳がん細胞の運動性亢進と亜鉛トランスポーターの役割」という演題で発表し、優秀発表賞を受賞しました=写真=。
糖尿病患者は乳がんによる死亡リスクが高いという統計データがありましたが、これまでその原因は明らかになっていませんでした。中瀬講師は、糖尿病における高血糖状態が、乳がん細胞の浸潤(=がんがまわりに広がっていくこと)・転移能(=がんが移転すること)を増強させること、そしてそのメカニズムには亜鉛ならびに亜鉛トランスポーターが必要であることを世界で初めて突き止めました。今後、より適切な乳がん治療法の発見や、亜鉛トランスポーターを標的とした薬や診断法の開発が期待されています。
トランスポーターとは、細胞膜に存在し、細胞内外に特定の物質を輸送することで、細胞の機能を調節・維持する重要な膜タンパク質です。同研究室では、2年前に、トランスポーターを標的とした乳がんの新規治療法の開発を目指すプロジェクトを立ち上げ、大学院薬科学専攻修士課程2年の松井千紘さん、薬学科6年の上田佳澄さん、上田綾佳さん、壺井莉奈さん、前田幸千恵さん、前田美子さん、松本佳子さんらと共に、研究を進めてきました。
中瀬講師は「高橋幸一教授、川原さと実助手、近藤小百合教務助手をはじめ、研究室のメンバーに心から感謝するとともに、引き続き、新たな創薬戦略の開発につながる基礎研究を展開したい」と話しています。