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卒業生の緋野由意子さんが著した小説『風が動く街』が「室生犀星文学賞」を受賞しました。「好きなことを見つけ、粘り強く取り組んで」と後輩へメッセージ。

2013/03/27

 本学卒業生の緋野由意子さん(本名・鈴木喜美さん、64歳)=写真右=の小説『風が動く街』が「第2回室生犀星文学賞」(読売新聞北陸支社主催)に選ばれ、3月26日夜、金沢市内の犀星ゆかりの寺院・雨宝院で表彰式が行われました。

 受賞作は、孤独な女性が元恋人との関係をつづった短編小説です。同文学賞には国内外から565編もの応募がありましたが、2人の審査員はいずれも『風が動く街』を1番に選びました。

「 強い力をもって人を惹きつける」と選考委員
 表彰式では、緋野さんに主催者から「年を重ねられても、文学への情熱を燃やし、花を咲かせられました」と表彰状、正賞の九谷焼の文鎮と副賞の目録が手渡されました=写真中=。

 選考委員の作家・加賀乙彦さん=写真左の左側=は「受賞作は謎解きのような作り方をしています。至る所に、落とし穴のような謎があって、一生懸命に読まないと穴の落ちてしまう。しかし、このボヤッとした関係が、作品全体をキュッと結び付けています。こういう書き方は初めてです。人物の関係、表現、独特の文体すべてに厚みがある。犀星の詩は、しばしばよく分からないが、強い力をもって人を惹きつける。それに近い小説が出てきたことはうれしい。今のままの文体で、ご自分の書きたい小説をどんどん書いていただきたい。楽しみにしています」と緋野さんを激励。
 犀星の孫で室生犀星記念館(金沢市)名誉館長の室生洲々子さんは「24日の犀星忌で、選考の報告をさせていただきました。今回は日本だけでなく、海外の幅広い年代の人からも応募がありました。緋野さんの作品は、想像力を働かせるものでした。祖父は女性が好きなので、あの世で女性の受賞を喜んでいるでしょう」とあいさつしました。

「受賞を励みに、書き続けます」と緋野さん
 最後に緋野さんは「日本の文学史の中でも大きな犀星という名前を冠した賞をいただき、とても光栄です。私のパソコンの中には、書き上げたまま埋もれている作品がたくさんあります。受賞作もその一つ。『何とか、日の当たる場所に出したい』という思いで応募しました。受賞を励みに、今後も書き続けていきたい」と喜びを語りました。

 緋野さんは、1971年に大学英米文学科(現・英語文化学科)を卒業しました。30歳代後半に「このまま子育てで時間が過ぎて、年をとってしまいたくない」と思い立ち、埼玉県越谷市の公民館の文章教室に参加。エッセーや小説を書き始め、2009年には『オレンジ色の部屋』が「第43回北日本文学賞」の選奨に選ばれています。

「好きなものを見つけたら、粘り強く取り組んで」と後輩へメッセージ
 授賞式後の受賞祝賀会場で緋野さんにインタビューしました。大学時代について「体育祭の応援合戦に出場しました。厳しい練習をしましたが、いい思い出になりました。日下先生(日下晃・前理事長)の憲法の授業も印象に残っています」と懐かしそうに語りました。そして、後輩の武庫女生に対しては「好きなことを見つけ、途中であきらめずに、粘り強く取り組んでください」というメッセージを送られました。

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