栄養科学研究所シンポジウム「食と栄養のサイエンスから健康を見直そう」が開催されました。
2014/04/11
栄養科学研究所が主催する第2回シンポジウム「食と栄養のサイエンスから健康を見直そう」が3月22日、中央キャンパスのメディアホールで開催されました。学生・教職員、一般市民ら約260人が参加しました。
午前の部では、4つの部門に分かれて取り組んでいる活動内容について紹介されました。
「食品栄養部門」の松井徳光研究員(食物栄養学科)は、「ヨーグルトの冷凍保存におけるCASの有効性と改善法の確立」と題して、CAS(Cell Alive System:生きた状態の細胞維持システム)冷凍によるヨーグルトの乳酸菌の生菌数や物性に与える影響について発表しました。新しい冷凍保存技術であるCAS冷凍が生きた乳酸菌の維持に有効であること、また物性の変化には「きのこ麹」を加えることによって冷凍前の物性を維持できることを紹介しました。
「食育・人材育成部門」の北村真理研究員(食物栄養学科)は、「楽しい食卓づくりをめざして~附属幼稚園での取り組み~」と題して、幼稚園と共同で行っている食育推進の活動について発表しました。楽しい食卓BOOKの作成や食育パーティーの実施によって、人のために作る喜びやみんなで食べる楽しさを体験し、「共食」を通した子どもたちへの食育活動を紹介しました。また、子どもから成人、高齢者まで生涯にわたり、一人ひとりが食育の取り組みを実践することの重要性を話しました。
「高齢者栄養科学部門」の前田佳予子研究員(食物栄養学科)は「咬合力アップ運動の有用性について」と題して咀嚼力や咬合力に着目した地域介入の研究結果を発表しました。加齢に伴う筋肉量の減少が咬合力やそしゃく力の低下にもつながっていると考えられ、高齢者は若年者と比較して咬合力が半分程度に低下するデータを紹介しました。そこで、咬合力アップを目的とした運動を行うことによって、低下を防ぎ、さらにQOL(Quality of Life:生活の質)の維持および向上にも寄与することを発表しました。
福尾惠介研究所長(食物栄養学科)は「栄養クリニック部門」で取り組んでいる「栄養サポートステーション(NSS)」について紹介しました。生活習慣病患者や独居高齢者が増加する中で、地域における栄養支援ネットワークを構築することが必要であり、NSSでは多職種(医師、看護師、管理栄養士)による包括的なサポートを実践していることを説明。また「対話による医療」を重視して時間をかけて課題に応じたきめ細やかな個別対応を行い、栄養状態の改善や治療効果の向上に寄与していることを発表しました。
午後からは地域における活動の紹介として、社協小松分区・鳴尾西分区の音楽のつどい参加者による「音楽で楽しく健康のつどい」発表があり、タンバリンをもって「踊り明かそう」の音楽に合わせて軽運動をしたり、「ふるさと」を手話付きで歌唱したりして、会場から大きな拍手を受けていました=写真右=。また、北島見江研究員(健康・スポーツ科学科)が体力づくり教室での体力測定結果を報告し、鳴尾北分区のひまわりエコーズ・ストレッチ体操参加者が実際にストレッチや「ふるさと燦々」「西宮音頭」「365歩のマーチ」の音楽に合わせた体操を披露しました=写真左=。
「『食と健康』-アルツハイマーから自己免疫疾患などに関する食事について-」と題した佐古田三郎氏(国立病院機構 刀根山病院 院長、大阪大学名誉教授)の特別講演では、食と健康にまつわる研究結果や病院で実践されている食事療法の話があり、参加者はメモをとりながら聞き入りました。農薬に長期間さらされると、アルツハイマー病のなどの認知症リスクが増大する恐れがあることや食品添加物、化学肥料の影響について話しました。また、「時間栄養学(食べる時間、順序、速度)」の話題では、食後高血糖を抑えるためには、野菜類を先に食べることや、朝食をとることの重要性を訴えました。そして、腸内細菌と体重との関係や、腸内細菌に多様性があると生活習慣病になりにくいことも紹介され、自然の食材を中心に適切な運動と良質な睡眠をとり、1日のリズムを整えることが大切であると話しました。
(栄養科学研究所)