作家のあさのあつこさんを招き、「作家と語る」第1回が行われました。
2014/06/28
武庫川女子大学読活プロジェクト「Lavyの扉」は6月28日、作家のあさのあつこさん=写真左=を招き、「作家と語る」第1回(芦屋市谷崎潤一郎記念館共催)を日下記念マルチメディア館メディアホールで開催しました=写真右=。
「作家と語る」は本学の大学・短期大学部の学生1万人を対象にした「読書に関わるアンケート調査」の結果、学生に支持が高い女性作家を招き、公募で選んだ学生と作家をつなぐイベントで、今回は『バッテリー』『The MANZAI』などで人気のあさのあつこさんを迎え、講演いただいた後に公募学生13人とトークセッションを行いました=写真中=。
講演であさのさんは「14歳の頃、海外ミステリーの面白さに惹かれて『物書きになりたい』と思いました」と話し出し、大学生のうちに物書きになるきっかけを見つけようとしたこと、縁あって児童文学サークルに入り、児童文学作家の後藤竜二さんに出会ったこと、地元に戻って結婚・出産を言い訳に書かない時期があったことなどを、楽しいエピソードを交えて語りました。
「私は14歳の時の夢をかなえることができたけれど、人によって信じているものがずれることもありますが、それをあきらめることは恥ずかしいことではありません。心の容量はそれぞれに決まっているので、何かを捨てることで新たに空間ができて豊かになることもあります。何かにこだわってやっていく中で、本当に覚悟があるのか、勘違いをしていないかを見極めることは大切なことだと思います」「学生時代をどう過ごすかは大事です。大学は高校生までの時期よりも世界が広がります。間口を広くして、嫌なことも含めて色々なことが飛び込んでくるように過ごして欲しいですね」と講演を締めくくりました。
第二部では今回のイベントを前に、あさのさんの作品から「グッときた一文」を冊子にまとめた13人の学生が、それぞれの思いを込めて質問をしました。
あさのさんは「ものを書くことは『ひっかきだす』こと。私の中の忘れたものや眼を背けていたものも全て登場人物につながっていく。人には色々な面があり、複雑で得体が知れない、そういったものを引きずり出すことなので、いい人は物書きにはなれません」
「軟式のボールを握って感触をつかむなど、五感を使うことで登場人物の造詣を深めていくことができます」
「文章を書くことはトレーニングと同じで、書き続けていれば書けるようになってくるものです。それより上のものを書けるかどうかは、執念や運が必要かもしれません。まず言葉でスケッチして、自分の記憶が表現できているかを確かめるのはよいトレーニングになります」など、学生の熱い思いに真摯に答えました。
今回は明治大学和泉図書館ともテレビ会議システムをつなぎ、明治大学の学生も画面の向こうで参加しました。同大学情報コミュニケーション学部の1年生からの「児童文学だから気をつけることはありますか」との質問にあさのさんは「児童文学だけでなく時代小説にも言えることですが、使えない表現があることに難しさを感じます。また、児童文学では絶望的なことは書きたくありませんね。ささやかな希望が感じられるものにしたいです」と答えました。
会場を埋めた学生や一般からの参加者ら約360人は、あさのさんのトークを楽しみながら、聞き入っていました。会場の様子は、中央図書館2階のグローバルスタジオでも中継されました。