「発達障害の前方視的研究プロジェクト」が本学2件目のオープン・リサーチ・センターとして採択されました。「私立大学術研究高度化推進事業」は計5件に。
2007/05/29
武庫川女子大学発達支援学術研究センター(代表:杉村省吾・文学部心理・社会福祉学科教授兼発達臨床心理学研究所長)の「健康な心理・神経発達の阻害要因の解明および支援方法の開発に関する前方視的研究」プロジェクトが、文部科学省「オープン・リサーチ・センター整備事業」に新たに採択されました。今回申請のあった35件の中で採択されたのは17件。その中でも上位での採択でした。
今回のプロジェクトの主体となる発達支援学術研究センターは発達臨床心理学研究所、大学院文学研究科心理臨床学専攻、文学部心理・社会福祉学科が設置母体の研究組織で、杉村教授をはじめ学内11人、学外9人の研究者が参加しています。
オープン・リサーチ・センター整備事業とは、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業の一環で、私立大学の中から、オープンな体制の下に研究を推進する優れた研究組織を文部科学省が選定し、重点的・総合的に支援を行う制度です。今回採択されたプロジェクトが文部科学省から支援を受ける期間は平成19年度からの5年間。
このプロジェクトは、子どもの発達における精神保健上の問題についての研究です。子どもたちをとりまく社会環境の変化の中で、すべての子どもは発達の危機に瀕していると考えられています。そのような状況の中で、同センターは各市町村が担当する1歳半時健診などの「一斉健診」の場を、“心理・福祉や医療などの分野に属する、子どもの健康な発達を目標とする専門家が協力して作業を行う場”と設定することによって子どもの発達を継続的に観察。そして、健康な発達の歪みや発達障害にいたるプロセスを明らかにしていく試みです。さらには、「障害児」を抱える養育者や教員への支援、あるいは反社会的行動に走る少年らの矯正的支援プログラムを構築することも視野に入れています。
このプログラムの一つのポイントは地域との連携です。すでに神戸市の賛同を得ており、今後神戸市をモデル地区として研究が進められることになります。具体的には神戸市子育て支援課(保健所)における1歳半時健診に研究チームが参加し、発達を阻害する可能性を持った「発達リスク児」を判別するための指標をつくることを目標としています。今後、各種シンポジウムや市民向けの公開講座などを開催し、研究の成果を広く公開していく予定となっています。
本学では2003年に採択された「生活習慣病オープン・リサーチ・センター」に次ぐ2番目のオープン・リサーチ・センターとなり、これよって本学の進める「私立大学学術研究高度化推進事業」採択のプロジェクトは全部で5つとなりました。
杉村教授=写真=は「採択されたことをたいへん嬉しく思います。29年前から発達に関する相談活動などを通して地域との連携を深めてきましたが、本センターが本学の推進する『研究・教育・地域連携』の活性化に繋がることを大いに期待しています」と語っています。