◇活躍する卒業生1◇ 草木染造形作家 梅谷夏帆さん(生活環境学部生活環境学科2018年卒)
2021/10/22
MWU graduate making a name for herself – Kaho Umetani, the plant dyeing artist.
草木染造形作家として活躍する卒業生の梅谷(旧姓岡田)夏帆さんが26日まで梅田阪急10階「うめだスーク」で期間限定ショップを出店しています。22日には中央キャンパスを訪れ、恩師らと再会しました。幼少時から大好きだったアクセサリー作りが高じて、高校3年生のときオリジナルブランド「Kahon」を立ち上げ、作家デビューした梅谷さん。武庫川女子大学で草木染と出会い、草木染造形作家としての基盤を確立しました。花や葉をモチーフにした繊細なピアスやブローチは女性を中心に幅広いファンを獲得しており、3月にKahonの名で初めての著書「キッチンにある材料・道具でできる草木染めの布花アクセサリー」(KADOKAWA)を出版しました。「卒業のとき、就職しない道を選ぶのは勇気のいる決断でしたが、今は楽しく仕事ができています」と語る表情は明るく、気負いがありません。MUKOJO Vision「一生を描ききる女性力を。」を体現する梅谷さんの生き方にフォーカスします。
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アイ、バラ、アカネ、ウコン、クチナシ――。アクセサリーや小物に添えられたカードには、染色に使われた植物の名が記されています。草木や花から色素を抽出し、綿や絹、羊毛などの天然素材を染めて作るアクセサリーは、大学生のころから変わらない梅谷さんの作風です。
草木染に目覚めたのは、大学3年生のとき。「染色加工学の授業で天然染色の布に触れ、自然のものでこんな鮮やかな色が出ることにびっくりしたんです。花をモチーフにしたアクセサリーを草木染で作ったら面白いなと、草木染ができる古濱裕樹先生のゼミを選び、実験と制作に明け暮れました」。今も染色の工程はゼミで学んだことが基本になっています。コンロに鍋をかけ、花や枝、葉をそれぞれ煮出して色液を抽出。布を色液で煮たり、絹糸をボール状にしたパーツを漬けてほんのり色づけたり。これがアクセサリーの花びらや実のパーツになります。古濱講師は「活躍ぶりを見て送り出した側としてはうれしい限りです。ポジティブな姿勢は後輩たちの励みになります」と満足そうに語ります。
梅谷さんは卒業後、アクセサリー制作、販売、教室を本格的に事業化しました。アクセサリーは花や葉をモチーフにした繊細なピアスが中心。作品をInstagramやホームぺージにアップしてWebで販売するとともに、アクセサリー制作の教室を対面とオンラインで開催しています。12月には東京で個展を開く予定です。
自分で栽培、採取した草木を使うだけでなく、お客様の思い出の花で絹布を染め、アクセサリーを作ることも。「プロポーズでもらったバラの花束から花びらの色素を抽出してバラのアクセサリーを作ったり。大切な人から受け継いだヒマワリの花で毎年、アクセサリーをご注文くださるお客様もいます」。一方で、五島列島の椿の葉と種を、アルミ媒染、無媒染、鉄媒染など条件を変えて絹と綿を染める緻密さからは、梅谷さんの研究者らしい一面も垣間見えます。
フォロワーが2万人を超えるInstagramでは、そんな作業工程やお客様とのやり取りも紹介。自然だけで作ったと思えない発色の良さ、丁寧な作業を経て完成するアクセサリーの数々を目で楽しめます。何より作家である梅谷さんが、作品作りを心から楽しんでいることが伝わってきます。
自著「草木染めの布花アクセサリー」は、スーパーで手軽に入手できる野菜で身近な綿や絹を染めて作るアクセサリーを提案しています。「シンプルな素材に限定したため思うような風合いを出すのが難しく、苦戦しましたが作品の幅が広がりました」。
実は梅谷さんの一家はみんな手仕事上手。アクセサリーを入れるミニ巾着の刺繍は祖母が手がけ、祖父は絵葉書で協力しています。今回のショップで初お目見えしたクマのクッションは、梅谷さんのお母さんが全面協力しました。顔周りは梅谷さんがヨモギや紅茶で染めた糸や羊毛を使って繊細に表現されています。ポケットに香りのサシェとブローチ入り。クマを包み込む巾着のひもは、祖父母が散歩中に見つけたヤシャブシの実から色を抽出するなど、細部まで心のこもった一点ものです。
「小さいころ、祖母が作ってくれた服や人形は今も大切にとっています。丁寧に作られた物は背景を知るほど愛着がわき、大切に長く使ってもらえると思い、心を込めて作っています」。
梅田阪急のショップでは梅谷さんを訪ねる女性客の姿が目立ちました。「Instagramの〝いいね″一つにも押してくれた人の姿が思い浮かび、対面と同じようにコメントをお返しするように心がけています」。一人ひとりとの関係を大切にする梅谷さんらしい心遣いです。
将来の目標を尋ねると、「ブランドを大きくしたいとか、売り上げを増やしたいという思いはないんです。一緒に働く仲間を増やし、Kahonが作家たちがやりたいことに挑戦できるプラットフォームのようになれたらうれしい」と、笑顔で話してくれました。