<日本語/English> ◇活躍する卒業生10◇ 株式会社楯菱電産取締役副社長 吉原安紀さん(生活環境学部生活環境学科2003年卒)
2022/04/19
◇Outstanding MWU Alumni◇ Tatebishi Densan Co. Ltd. - Executive Vice President, Ms Aki Yoshihara (Graduate of 2003, Department of Human Environmental Sciences)
現社長の父から、機械製造業「株式会社 楯菱電産」の事業を承継し、まもなく3代目トップに立つ吉原さん。副社長就任以来、女性が働きやすい環境整備に力を入れ、ものづくり企業の魅力を広く発信しています。兵庫県稲美町の本社に吉原さんを訪ねました。
火花を散らす溶接作業、吊り上げられる金属の塊、絶え間なく注がれる切削水――。楯菱電産の工場は、まさに「ザ・製造業」。800度に熱した鉄板を水圧で半円に曲げる「焼き曲げ」を得意とするだけに、美しいカーブを描いた大型の半円や巨大な円筒が目につきます。主力は半導体の素材であるシリコンを巨大な棒状(インゴット)に固める装置の部品(型枠)。最近の半導体不足で需要が高まっています。
「自動車の走行試験用の装置から火力発電所で使うコンテナ、配管やレールの接合など、小さいものから巨大なものまで、この工場で一貫生産できるのがわが社の強みです」と吉原さん。工場内では、製品ごとに進行する工程で、忙しく立ち働く作業服姿の社員が見られます。よく見ると女性の姿も。「社員40人のうち、私を含め女性は7人。事務だけでなく、検査など工場の現場作業に従事する女性もいます。子育てしながら頑張っている女性社員もいて、能力は高いですよ」。
大学時代はインテリアを中心に学んだものの、卒業と同時に結婚、出産し、いったんは家庭に入ったという吉原さん。建設会社を経営する夫を手伝いながら、3人の子育ての傍ら1級建築士の資格を取得しました。3年前、祖父の代から続く楯菱電産を率いる2代目社長の父親から「会社を継いでほしい」と託され、意を決して飛び込みました。
以来、「曲げの技術」を活かした事業の拡大とともに、「女性の力をもっと活用しよう」と、改革を進めています。「女性が働きやすい職場は男性にも快適なはず。工場の照明を明るくしたり、更衣室をきれいにしたり、まずは環境を整備しました。また、新しい機械を入れて作業の効率化をはかったり、工場内にWiFiを完備してオンラインでクライアントの立ち合い検査を可能にしたり。ホームぺージも充実させ、発信力を高めています」と、柔らかな笑顔で語ります。目標は「わが社ならではの高い技術力を広め、社会に貢献すること」。社員一人ひとりとのコミュニケーションを大切にし、働きやすさに配慮するのも「技術は人、人は会社の宝物」との思いがあるからです。「大学時代、ゼミで国際的な品質規格であるISOを研究したことが、製造業に対する意識の土台になっている」と感じています。
家では高校生と大学生のお母さん。「朝5時に起きて5人分のお弁当作りと夕食づくりなど、家庭と仕事の両立は大変ですが、家族は働く原動力でもあります。今はいろいろな働き方に寛容な社会になってきているので、女子学生にはぜひ、中小製造業を進路の選択肢に入れてほしいですね」。
4月15日、経営学部で中小企業を研究する山下ゼミ(山下紗矢佳講師)の学生15人が同社を見学しました。その模様は5月2日(月)午後5時15分(前後)放送の朝日放送テレビ「武庫川女子大学のむこじょTV」で紹介される予定です。