活躍する卒業生44 フェムテック製品開発・販売「Marché KANON」代表 峠ひかりさん(教育学科2018年卒)
2024/05/29
「現在、SOLD OUTとなっております」――。2022年10月の発売以来、Webサイトにたびたびこんなメッセージが出るほど、生産が追い付かない「吸水ショーツ」を生み出したアイデア起業家。もう一つの主力商品・月経カップではサブスクリクションを取り入れ、生理時の選択肢を広げています。
きっかけは証券会社に勤務していた2019年、新聞で見た吸水ショーツの話題。姉と二人で市販品を片っ端から試したところ、「布地が黒くて経血が見えにくい」「横漏れする」「におう」「汚れがとれない」など問題点だらけ。「私達ならもっといいものができるはず」という率直な思いから、「理想の吸水ショーツづくり」が始まりました。
吸水部は5層に、肌にあたるメッシュ部は編み目を荒くして吸い込みをよくし、脇は袋編みに、デザインはかわいく――。「姉妹だからこそ、赤裸々に話し合い、追究できた面はありますね」。試作品を作ってもらおうと工場にかけあうものの、交渉相手は男性ばかり。「なんですかそれ?と、話がかみ合わず、20社以上回りました」と振り返ります。
ようやく出会った兵庫県加西市の工場で試作を繰り返し、2022年にフェムテック商品を扱う「Marché KANON」を姉妹で立ち上げました。
発売直後、学生時代の担任だった吉井ゼミ(吉井美奈子准教授)を訪れ、後輩たちの意見を聞いたことがあります。意外にも吸水ショーツより、当時検討中だった月経カップに人気が集中しました。膣内にシリコン製のカップを挿入して経血をためる新タイプの生理用品。「出産経験のある人の方が抵抗がないかと思ったらむしろ逆。“ちょっと高い”という声が、サブスクを検討するきっかけになりました」。使用方法がわからない人向けに動画をアップしたり、購入者にLINEで「困りごとはないですか」など定期的に声かけをしたりするサービスも、この時の後輩たちの声から生まれました。
後輩との話し合いで気づいたことがもう一つ。「日本は女性同士で生理について話し合う機会が少なく、他の選択肢に目が向かない人が多い。でも、尋ねるといろんな悩みや困りごとが出てくる。話すきっかけが必要と感じました」。そんな学生たちの声に触れたくて、しばしば母校に足を運び、恩師とおしゃべりを楽しみます。
今後はアスリートやCA、看護師、教員など、それぞれの生理の悩みに、商品で答えていきたいと言う峠さん。自身は武庫川女子大学附属中高から大学に進み、社会人になって初めて「男性の目が気になって生理のときトイレに行きづらい」という悩みを知ったそう。「女性が生理のために活動を制限されるのはおかしい。被災地など水が使えないときに月経カップを清潔に保つシートの開発にも取り組んでいきたい」と峠さん。6月から経営学部の実践学習で新たな商品の開発やマーケティング等に取り組む予定です。