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活躍する卒業生#46 日本LGBT協会代表理事 清水展人さん(短期大学部健康・スポーツ学科2005年卒)

2024/10/22

LGBTQの当事者として理解を広げる活動を行っている卒業生の清水展人さんが「いちばんやさしいLGBTQ」(KADOKAWA)を出版しました。「この大学で学んだことを誇りに思っている」と言う清水さんにとって、中央キャンパスは「惑い、揺れ動いた」場所。出版を機に、母校の女性活躍総合研究所から文化祭での講演を依頼され、10月12日、自身の体験とLGBTQをめぐる社会の変化について講演しました。

 

「10年ほど前までは学校や企業でLGBTQという言葉さえ知らない人が多かった」と清水さん。2015年に文部科学省が学校現場で性的マイノリティに配慮を求める通達を出したころから、教科書にLGBTQが記述されたり、各地でパートナーシップ制度が導入されたり、多様性への理解と制度整備が徐々に進みました。逆にいえば、それ以前は当事者の思いは多くの場面で置き去りでした。

 

清水さん自身、3姉妹の長女として生まれ、「女の子だから」と当たり前に強要される遊びや服に違和感を持って育ちました。「女の子用の水着、七五三の赤やピンクの着物、祖母が手作りしてくれるワンピース。ありがたいけれど『いやなものはいや』というメッセージを幼いながらも必死に出していた。でも『女の子だから』『それが普通だから』と聞き入れられなかった。多様性への理解が今よりずっと遅れていたんです」。

 

小学校時代はスカートを一切履かず、サッカー好きの元気な子どもでしたが、高学年になると「おとこおんな」など、言葉の暴力を浴びることも。中学、高校時代には強制される制服のスカートに葛藤し、徐々に無気力になったという清水さん。「見た目は女子高校生風でしたが、自分らしさや生きがいを見失い、抜け殻のようになっていました」。

 

「子どもにとって教師や周りの大人は最大の教育環境」と清水さん。だからこそ、「子どもたちが自分らしく生きられるようサポートしたい」と、教育の道を目指し、教員養成に実績のある武庫川女子大学への進学を決意します。

 

「女子大卒で将来困らないかな」という不安は心をよぎったものの、「男女で区別されることがなく、自由な服装で過ごせる」女子大は清水さんを解き放ち、カミングアウトを決意させます。「泣きながら打ち明けたとき、友だちはいっしょに涙して『話してくれてありがとう』と言ってくれました」。

 

病院で性同一障害の診断を受け、ホルモン治療を始めると新たな葛藤が生まれます。「体は徐々に男性になっていく中で、トイレ一つにも『男?女?』と問われるような苦しさが芽生え、どんどん追い込まれていきました」。

 

両親との確執、就職活動での心無い対応に傷つきながら、周りから見える清水さんは”笑顔”でした。当時を知る人が「いつも笑顔だったから、悩んでいたなんて知らなかった」と驚くほど。「LGBTQの人は10人に1人というアンケート結果もあります。身近にそういう人たちがいることを念頭においてほしい」。

 

21歳で戸籍上の氏名と性別を変更。パートナーと出会い、2児の父となった今、清水さんは全国の教育現場をはじめ、企業や自治体で講演を行い、活動の幅を広げています。「結婚して自分を好きになれた。自分らしい生き方をあきらめなかったから出会えた幸せです」。著書では自身の経験を交えながら、LGBTQを「自分ごと」としてとらえる視点、法律や制度まで分かりやすく解説しています。

母校での2時間にわたる講演中も常に笑顔を絶やさなかった清水さん。「今も同じような苦しみを抱える人が大勢います。当事者が頑張るのではなく、周りが『人はこうあるべき』という決めつけを手放せば、誰もが生きやすい社会が生まれると思います」と、穏やかに語りました。

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