薬学科の吉田研究室が、幼児対象の「衛生的手洗い教材」として「カニさん手洗い」を開発しました。
2024/11/25
薬学部薬学科臨床製剤学研究室(吉田都教授)が衛生的手洗い教材の開発に取り組み、11月2~4日に行われた第34回日本医療薬学会年会で発表しました。教育学科や附属保育園と連携し、幼児を対象とした「楽しく学べる」薬育教材を目指します。
吉田教授らは、新型コロナウィルス感染症が5類に移行して以来、手洗いの意識が薄まっていることに着目。特に指先や指の間に汚れが残りがちであることから、子どもたちが歌に合わせて遊びながら隅々まで手洗いができる方法を考えました。「汚れ」に見立てるため、舐めても安心な素材で手洗いクリームも開発しました。最初に考えたのが「ソーセージパン」「焼きそばパン」など、手の平と指をパンと具になぞらえて洗う「パン屋さん手洗い」。付着したクリームはきれいに落ちたものの、「ストーリーがないので覚えにくい」という難点がありました。
そこで助手の林紗希さんが「カニが体を洗う手遊びにしては」と発案。カニが足やはさみを洗うように指を一本一本丁寧に洗い、手の平と指先を擦り合わせて爪の間までしっかり洗えるよう工夫しました。
「みぎてだして、ひだりてだして、かにさんこんにちは(カニッカニッ)、せっけんあわあわ おなかすりすり・・・」という歌詞とメロディも林助手の作。「小さな子どもはよく指先をなめるのに、一般的な手洗い歌では指先があまり洗えないのが気になっていました。自分が子育てしながら自然に口ずさんでいたメロディに乗せて、楽しく覚えやすい歌にしました」と林さんは話します。
効果を確かめるため、研究室所属の4,5年生と薬学科教員を対象に手洗い実験を実施。指先から手首まで手洗いクリームを塗った後、自己流とカニさん手洗いを行い、それぞれクリームがどれくらい残っているかを確認したところ、カニさん手洗いではクリームがほとんど残っていませんでした。
10月には吉田教授らが附属保育園に出向き、5歳児を対象に、カニさん手洗いを指導しました。吉田教授は「園児たちは楽しくカニさん手洗いを実践してくれました。附属保育園を有し、幅広い学部学科を有する総合大学である武庫川女子大学だからこそできる連携です。せっかく定着した衛生意識を継続するきっかけになれば」と話しています。
武庫川女子大学薬学部薬学科臨床製剤学研究室では、薬物乱用が低年齢化していることから、低年齢層の子どもたちへの薬育の必要性を提唱しており、「カニさん手洗い」が薬育教材として定着することを目指し、さらに完成度を高めます。また、現在、歌詞の英語翻訳にも挑戦しており、万博での実施を目指しています。