「鳴尾苺保存会」の学生らが、名産品の復活に向けて活動。地元に残る唯一のイチゴ畑で栽培方法を学び、先輩から研究成果を受け継ぎました。
2008/05/20
三宅正弘・生活環境学科准教授のゼミ生らが中心になって組織した「鳴尾苺保存会」が地元に残る唯一のイチゴ畑の一角を借りて、実際に栽培をすることになりました。本学院の地球環境保全教育プロジェクトのアイデア・コンテストで、会員が応募した「鳴尾苺を用いた環境保全・地域循環の活動」が最優秀賞に選ばれており、鳴尾苺復活への動きは本格化してきました。
鳴尾苺は鳴尾地区の砂地が栽培に適していたこともあり、かつては至るところで栽培されていました。品種は、近くにあった鳴尾競馬場にちなんで「ダービー」と名づけられました。しかし、戦時中は多くの畑が工場造成のために買収され、戦後は一帯は住宅地に一変。現在では、イチゴ畑は中央キャンパス近くにある中島憲二さん=写真左の右端=の畑だけになりました。
この鳴尾苺を地元の名産品として復活させようと、2年前に三宅ゼミの学生らが「鳴尾苺保存会」を組織。生活環境学科の学生に参加を呼びかけ、現在は会員は約40人に増えました。
会員らは5月9日、中島さんの畑を訪れ、栽培方法を中島さんから教えていただきました。イチゴははまさに収穫の時期を迎えており、青々とした葉の間から赤い実が顔を覗かせていました=写真中央=。今栽培されている品種は、宝塚発祥のものと掛け合わせた「宝交(ほうこう)」というもので、歯で噛まなくても舌で押しつぶせるほど柔らかい実が特徴です。その昔ながらの甘さを味わうにはゼリーやジャムにするのが最適だそうです。「収穫したイチゴはどうするのですか」と学生が訪ねたところ、地元におすそ分けするので、すぐになくなるということです。鳴尾苺の収穫は衰退してしまった今も地元の人たちにとって大きな楽しみとなっています。
学生たちは「イチゴの栽培に適した土壌とはどのような条件を満たしているのですか?」「冬の水遣りはどのようなことに気をつければいいのですか?」など中島さんに質問をし、真剣な表情でメモをとっていました。
今回の訪問で、学生たちは鳴尾苺の復活に向けて、更に大きく踏み出すことになりました。10月中旬から中島さんの畑の一部を借り、苺の栽培をさせていただけることになったのです。鳴尾苺の研究は続けてきましたが、実際にその栽培に着手するのは初めてです。イチゴ作りの第一歩は畑に生えた草をむしり、耕すこと。これから自分たちが手を加えていく畑を学生たちは感慨深げに眺めていました。「この1年でイチゴを作る技術を身に付け、学内で育てられるようにしたいです」と学生たちは意気込んでいます。
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「鳴尾苺を用いた環境保全・地域循環の活動」を提案した室田美樹さん(2008年生活環境学科卒)=写真左=は5月14日、本学を訪れ、これから鳴尾苺の復活に向けて活動に携わっていく後輩たちに鳴尾苺の今昔、農地の変遷などについて説明、「後輩の皆さんに鳴尾苺の研究を引き継いでもらえることがとてもうれしいです」と笑顔で語りかけました。三宅准教授が「味というものは記録に残ることがない。鳴尾苺を味わい、更に他の苺と食べ比べて苺ききができるようになってもらいたい」と呼びかけると、学生たちは顔を見合わせながら頷いていました。
「鳴尾苺保存会」はホームページ「鳴尾苺保存会」
で、研究成果やイチゴの成長を報告していきます。鳴尾苺の復活をみんなで見守ってください。