活躍する卒業生#51 ドラマ「私たちの東京ストーリー」のシナリオを手掛けた江島陽子さん(1990年3月 文学部国文学科卒)
2025/05/16
2025年1~2月、フジテレビ関東ローカルとBSフジで放送された日中合作連続ドラマ「私たちの東京ストーリー」全10話のシナリオを担当した江島さん。総合演出の張歓喜さんとの共同執筆ながら、張歓喜さんの構想原案をもとに、全編、日本語で書きあげました。武庫川女子大学を卒業後、公立中学校や工業高校で教員として勤めてきた「国語の先生」が、なぜテレビドラマのシナリオライターに?
「50代を迎え、子どもも独立して定年が見えてきたときに、心の片隅に封印していたかつての夢が浮上してきたんです」。その夢とは”物書き“になること。一念発起して職を辞し、2020年4月、シナリオセンターに入学。様々な設定でシナリオを描き続けました。
1年間の研修を終えた直後、舞い込んできたのが、中国テレビを放送する「大富」が企画する連続ドラマのシナリオ制作。同ドラマのスタッフだった長女が橋渡しとなりました。約20年前に日中両国で放送されたドキュメンタリー「私たちの留学生活~日本での日々~」をベースに、中国人留学生の30年を描く構想でした。
「いろいろなライターに打診する中で、『やる気と熱意がある』ということで白羽の矢が立ったようです。もちろん、やります!ですよね」。生活のすべてを注ぎ込む決意で拠点を東京に移しました。
留学生や関係各所を1年にわたり取材し、いよいよ執筆という時、壁が立ちはだかりました。「原案があまりに膨大で、読んでも読んでもストーリーの終わりが見えてこない。1話仕上げるにも10回以上の書き直し。逃げ出しそうになりました」。そんなとき、長女の「ドラマはみんなで作るもの。最初の一歩を形作ってくれたら十分だから」という言葉に救われました。
日本の脚本と異なり、ト書きの多さにも悩まされましたが、「登場人物の来歴やそのセリフにつながる背景をしっかり書き込むことで、現場にいる日中双方のスタッフが、各シーンの趣旨を共有できた。表に出ないところまで作り込む中国式のドラマ作りの奥深さに感銘を受けました」。
3年かけて完成したドラマは好評を博し、再び神戸に戻って中学校の現場に復帰した江島さん。今の夢は「シナリオを国語の教材として活用すること」と微笑みます。「いろいろな立場に立ってセリフを考えるシナリオは、他人への想像力を働かせるのに最適の素材。構成力や語彙力、取材力も身に付くと思うんです」。
そんな江島さんにとって、国文学を専門に学び、教員免許取得をかなえた武庫川女子大学とは?。「教職のサポートが手厚く、体育祭の応援合戦とか、寮での暮らしとか、いろいろな経験をさせてもらいました。そうした経験がシナリオに生きてくるんです」と、久しぶりに訪れた中央キャンパスを懐かしそうに見渡しました。
あと2年で迎える還暦のその先を「二周目の人生」と捉え、「一周目は自分の意思で生きたようで実は流されていた面もあった。2周目は自分の意思でやりたいことをやりきりたい」と力を込めました。
(写真1枚目:母校を訪れた江島さん。2~3枚めはスタジオ編集風景、4枚目は撮影風景)