活躍する卒業生#57 テキサス州で薬剤師として活躍する大野真理子さん(薬学部薬学科1997年卒)
2025/12/12
アメリカ在住20年以上。自らを「Calculated Risk Taker(リスクを計算したうえで行動する人)」と呼ぶ大野さんは、テキサス州にあるウォルグリーンズ傘下のスペシャルティ薬局に勤務する薬剤師です。「ぶれないキャリアの軸があるから一歩踏み出す勇気が持てるんです」と、オンライン画面の向こうで爽やかに笑います。
薬剤師免許は武庫川女子大学薬学部卒業と同時に取得しました。嘱託助手として研究を継続していたとき、講演のため来日したフロリダ大学の教授との出会いを機に、フロリダ大学薬学部への留学を決意します。「コミュニケーション力があれば大丈夫」という周囲の言葉に背中を押され、トランク2つで渡米。英語力は入学要件ぎりぎりでしたが、最先端の臨床薬学への意欲をエンジンにPharm D(Doctor of Pharmacy)を取得し、フロリダ州で薬剤師として働き始めました。
「飛行機の乗客がパイロットを選べないように、患者さんも薬剤師を選べない。だからこそ、命を預かる者としてベストな情報を与えたいし、専門性も磨きたいと勉強を続けてきました。患者さんに育ててもらったと思っています」。
薬局長となってマネジメントの必要性を感じたことからフロリダ大学のビジネススクールに通い、30か月かけてMBA(経営学修士)を取得しました。
「ちょうどオピオイドの過剰摂取が社会問題になっていた時期。勉強にのめり込むことで、不適切な調剤が横行する絶望感から逃れたい思いもあったんです」。
2016年、新天地を求めてテキサスへ。専門薬剤師の資格を持つHIVをはじめ、がんや多発性硬化症など様々な疾患を抱える患者一人ひとりと向き合っています。
「薬局は病院と違って患者さんと長くお付き合いできるのが魅力です。私を指名して来店する人や、患者さんが亡くなった後、訪ねてくれる遺族もいる。ありがたい仕事です」。
高校時代、目標が定まっていなかった大野さんに「武庫川女子大学の薬学部」を薦めたのは初孫を溺愛していた“おじいちゃん”でした。「薬剤師は良い仕事だ」という祖父の一言が、ぶれない軸の始点となりました。「女子大だから実験機器が故障しても自分で何とかするしかない。誰もが良い意味の自主性を持っていたと思います」と振り返り、「共学になっても女子大時代の良さを継承し、より良い教育機関に発展してほしい」と、2027年度から共学化する母校にエールを送ります。
私生活ではチャリティをきっかけに始めたロードバイクとマラソンに取り組むスポーツマン。日本人コミュニティが活発なダラスに暮らし、ランナー仲間も増えました。「来月初めてフルマラソンを走るんですよ」とひときわ笑顔で語ります。
後輩へのメッセージを求めると「人のアドバイスはあまり聞かなくていい。自分の人生なのだから。でも、しなくてよい経験は確かにあるので、学生時代にしっかり学び、判断力を身に付けて」と呼び掛けました。



