チーム医療の薬剤師に求められる能力は? 病棟での薬剤師業務を想定して、医師、看護師、管理栄養士と治療法を考える特別授業を薬学部で実施。
2008/07/04
薬剤師を目指す学生たちが、病院などの臨床現場で、医師や看護師、栄養士などと共同して患者さんに最適な治療を行なうことのできる能力の向上を目指す「CPPC(Clinico Patho Physiology Conference=臨床の現場に携わる各職能による合同チームカンファランス) トライアル」が6月21日、浜甲子園キャンパスの講堂で行われました。=写真右=
これからの薬学教育では、臨床の現場において即戦力となり得る人材の養成が、一層期待されています。
薬学部の新しいカリキュラムは、現場に携わる各職能チームの一員として活躍できる薬剤師の育成が目標の一つ。トライアル(特別授業)は、この新カリキュラムにおけるCPPCの本格実施に先駆けて行われました。
薬剤師は患者さんの症状や、その人の背景を理解した上で、専門的立場から処方・治療を提案します。トライアルでは、外部講師として京都大学附属病院看護師・大倉瑞代氏(糖尿病看護認定専任看護師)と、京都大学附属病院管理栄養士・北爪綾子氏を招き、臨床薬理を受講する4年生たちが、「膵臓がんにより、膵臓を全摘出した60歳代の女性」が内科病棟に転科した実際の症例を通して、薬物治療法・栄養サポート療法についてディスカッションしました。
学生たちは「病態生理チーム」「糖尿病チーム」「骨粗鬆症と痛風チーム」「NST(Nutrition Support Team)チーム」に分かれて、あらかじめ示された症例(検査所見)について約2カ月かけて分析し、検討してきました。発表では「病態生理チーム」が内科病棟への転科時とそれ以降の検査結果から病態を解説。「糖尿病チーム」「骨粗鬆症と痛風チーム」「NSTチーム」は患者さんの入院中そして退院後の生活で重要と思われる病名と病態、対処方法について分析し、治療方法と食事療法について提案しました。=写真左=
病棟や外来での専門業務について、看護師・大倉氏は「糖尿病看護認定専任看護師」の役割や、患者さんの身体、精神、社会面(生活など)から捉えた支援について、管理栄養士・北爪氏は、その人の理解や状況に応じて、また嗜好を配慮して継続的に栄養指導を行う必要性を実例に基づいて紹介しました。さらに大倉氏と北爪氏は、チーム医療の中で各職種に期待することは、「情報の共有」「職種による視点やアプローチの違いの理解」「患者さんを含めて皆が同じ目標を認識すること」と話されました。
ディスカッションでは、互いの発表についての詳しい説明を求めたり、病棟での様子や食事などについて、大倉氏や北爪氏へ質問したり、主治医役としてトライアルを進行している森山賢治・薬学部教授に検査結果の詳細を確認したりするなど、学生たちは積極的に議論していました。また、フロアーから3年生からの質問も寄せられ、来年のCPPCがさらに進化しそうな雰囲気も感じられました。