シンポジウム「地球を守るために、今、できること」を動画で紹介しました。アルピニストの野口健氏や京都大名誉教授の芦田譲氏らが講演。
2010/07/05
地球環境の現状を知り、大学・地域・社会で取り組み課題について考えるシンポジウム「地球を守るために、今、できること」が6月26日、中央キャンパスのメディアホールで行われました。700人以上の応募者の中から抽選で選ばれた約350人が参加し、アルピニスト・野口健さん=写真右=と京都大学名誉教授(NPO法人環境・エネルギー・農林業ネットワーク理事長)芦田譲さん=写真中=の講演やパネルディスカッションなどに熱心に耳を傾けました。
このシンポジウムの様子を7月5日、本ホームページの動画ニュースに掲載しました。またシンポジウムの再録記事は、7月9日付日本経済新聞朝刊に掲載されます。
糸魚川直祐学長は「宇宙飛行士の山崎直子さんが地球に戻られたときの第一声は『地球は美しい』でした。この美しい地球を守るため、武庫川学院を挙げてさまざまな活動に取り組みます」とあいさつ。続いて、多彩なプログラムが繰り広げられました。
基調講演「21世紀は資源争奪の時代―持続可能・地方分権型社会構築に向けて」芦田譲さん
芦田さんは始めに地球構造や世界の大陸の成り立ちに説明。続いて「石油、天然ガスなど化石資源は有限です。現代社会はエネルギー・工業原料・運輸・食料等の産業のあらゆる分野において石油・天然ガスに依存しています。石油はすぐになくなることはありませんが、減退していきます。有限であることを念頭に、先を予測し対策を立てなければなりません。リスクマネジメントが必要です」と話しました。
武庫川女子大学の取り組みの報告
環境宣言を2008年に発表し、学院全体で環境保全に取り組んでいる具体的な活動を、本学院の教職員が報告しました。
健康・スポーツ科学科講師の松本裕史さんは5月20日から全学的に始めた「エコロサイズしよう! 階段利用促進キャンペーン」階段利用促進キャンペーンについて説明。学生が考えた標語で、階段を利用する人が増えていると報告しました。
事業課管理栄養士の河村恭子さんは使用済みの天ぷら油をバイオ燃料にして学院の車を走らせている活動を紹介しました。会場前には、使用済み天ぷら油から作ったバイオ燃料で走るレーシングカーが、レボインターナショナルの協力で展示されました。
生活環境学科准教授の三宅正弘さんは鳴尾イチゴを用いた環境保全・地域循環の活動について報告。イチゴ作りは、本学から地域へと広がっている様子などを紹介しました。
特別講演「富士山から世界を変える」野口健さん
野口さんはエベレストや富士山での清掃活動を始めたきっかけや、これまで約10年間の活動を紹介し、「環境問題といえば、なんとなく自然を相手に取り組むというイメージがありますが、そうではなく相手は人間社会です。環境問題への取り組みは、一部の人たちがやるものではなく、いろいろな人がかかわっていくものです。どういう社会、どういう日本を作って行くのかを考えることです」と強調。
「最初は富士山の清掃活動の参加者は少なかったが、今では増え、誰もが知っている活動になりました。登山客のごみの多かった五合目以上はきれいになり、五合目以下の樹海の不法投棄物も少なくなりました。富士山で起きていることは全国どこでも起きていることです。富士山での取り組みがモデルケースとして広がり、富士山から日本が変わっていくのではと思っています」と熱っぽく語りました。
講演の後には野口さんへの質問の時間が設けられ、会場からの質問に野口さんはユーモアを交えながら答えていました。
パネルディスカッション「地球を守るために、今、できること~武庫女から世界に広がるエコロジー」
西宮市環境局環境緑化部の山上明人さん=写真左の右端=、阪神電気鉄道不動産事業本部の鳥居祐典さん=同中央=、学友会総務委員長の竹内郁美さん(情報メディア学科3年)=同左端=の3人がパネリスト、芦田さんがコメンテーター、三宅さんがコーディネーターになって、ディスカッションが行われました。
山上さんは、西宮市が取り組んでいる環境政策の全体像とエココミュニテイ会議を紹介し、「キーワードは『つなぐ』です。各種団体の活動と活動や、人と人をつないでいきたいと考えています」と実例を交えて話しました。
鳥居さんは、なんば線の開通が公共交通機関の利便性を向上させたこと、沿線の駅の省エネステーション化、甲子園球場リニューアルでの環境対策、商業ビルでの省エネシステム、阪神バスのエコ車両の導入などを紹介。「ハード面を整備していますが、実際には快適に利用していただいて始めて効果があるものです。地域との交流によって、もっとサービス向上につながるものは何か、ご意見をよせてください」と呼びかけました。
竹内さんは、本学で展開しているエコキャップ運動を紹介、「昨年から今年の3月にかけて行われたエコキャップ運動では、24,120個のキャップが集まり、30.2人分のポリオワクチンになりました。今後は多くの方に協力していただけるように体制を整えていきます」と語りました。
最後に芦田さんは「武庫川女子大学が創立80周年を迎える10年後には、地域を巻き込んだエコロジー活動の輪がさらに広がっているといいですね。将来、『武庫女から世界へ広がった』と言えるよう、身近なことから一歩一歩始めましょう」とシンポジウムを締めくくりました。