「褻(け)の中で、美味しいお菓子は人の心を豊かにしてくれます」。日本洋菓子界を牽引するケーキハウス「ツマガリ」の創業者・津曲孝氏が生活美学研究所の研究会で講演しました。
2007/06/02
西宮市甲陽園の人気のケーキハウス「ツマガリ」の創業者・津曲孝氏=写真=が6月2日午後、甲子園会館西ホールで開かれた生活美学研究所の研究会で「『晴(は)れ』のお菓子と『褻(け)』のお菓子~洋菓子界のリーダーとして40年の歩み~」と題して、講演しました。
宮崎県出身の津曲氏は「子供の頃は生活が苦しく、海や山で食べ物を探し回りました。この経験から、食べ物に対する嗅覚が発達し、食べ物を無駄にしないで、美味しく食べる技術が実に付きました」と生い立ちを振り返りました。職人としては「自分のために技を磨くことが、人のためにもなる。偽りのない材料を使い、良心的に作ることが何より大事」と強調しました。
日本の洋菓子は、晴れがましい「晴れ」の日を飾るものとしてスタートしましたが、今では日常的な「褻」のものとして生活に定着しています。津曲氏は「昔は豪華な形のお菓子を作っていればよかったが、洋菓子が褻の中で当たり前のようにある時代になった今は、お客さんが(良い商品とは何かを)よく知っている。商品力がなければやっていけません」と指摘。「褻という日常の中で、美味しいお菓子はコミュニケーションを作ってくれ、人の心を豊かにしてくれます。私は、お菓子が褻・日常の中に溶け込むよう、目に見えない、とてつもない努力をしています」と力を込めて話しました。
最後に津曲氏は「今日は1時間半にわたって甲子園会館を見学しましたが、見事な建築に感服しました。作った人の思いを感じ取ることが出来ました。こんな素晴らしい建物でお話できたことに感謝します」と話されました。
津曲氏は1967年に日本の洋菓子界の草分けの東京・ヒサモトに入社して職人の道に入り、86年にケーキハウス「ツマガリ」を西宮市で開店しました。若手職人の育成にも尽力し、国内外で様々な賞を受けています。兵庫県洋菓子協会副会長。