◇活躍する卒業生5◇ 薬剤師/一般社団法人「街かどがんサロン・サンフラワー」理事 櫻井美由紀さん(2010年 武庫川女子大学大学院薬学研究科薬学専攻 薬学博士取得)
2021/12/10
大阪市浪速区で、がん経験者やその家族をサポートする「街かどがんサロン・サンフラワー」を運営している櫻井美由紀さん。がん専門薬剤師として「がんの治療後に起きてくる様々な心身の変化を相談できる場所が少ない」と感じ、「まちなかでふらっと立ち寄り、相談できる場所に」と、2020年、同サロンを立ち上げました。パソコンを並べた事務所とヨガ教室、ウィッグの試着もできる小部屋のあるフロアで、櫻井さんら薬剤師のほか、医師や看護師、社会保険労務士らがボランティアで相談に応じています。
櫻井さんと武庫川女子大学の縁は約20年前。徳島大学薬学部を卒業後、薬剤師として阪神間の病院に勤務していましたが、「もっと専門性を高めたい」と、現状に歯がゆさを感じていました。一人息子も少し手が離れたころ、武庫女卒の“ママ友”から武庫川の大学院薬学研究科が昼夜開講制になったことを聞き、「とにかくやってみよう」と修士課程に飛び込みました。
仕事終わりに夜の授業に駆け付ける日々は、家族や職場の応援もあり、充実していました。「研究マインドや研究手法が身につき、それまで、点でしかなかった経験や知識が意味を持ってつながる実感がありました」と振り返ります。
同期には大阪・兵庫の病院や薬局に勤める中堅薬剤師が多数いました。櫻井さんと同じように「働きながら学べる場」を待ちかねていた人たちのモチベーションは高く、修了後も自主的な勉強会を続けました。2004年には、武庫川女子大学の恩師や同期たちと『注射薬Q&A』(じほう)を出版。06年に櫻井さんは後期博士課程に進み、その後も“武庫女つながり”で多数の共著を出版しています。「街かどがんサロン」も、このときの“武庫女仲間”と立ち上げました。
57歳で別の大学の通信教育課程に編入学し、認定心理士の資格を取得するなど、学びへの意欲は衰えません。現在も臨床薬剤師として関西労災病院でがん患者さんのベッドサイドにも立ち、神戸薬科大学の非常勤講師として後進を育てています。
実は、櫻井さんと武庫川女子大学を結び付けた“ママ友”は、弘前大学の郡千寿子副学長(1990年武庫川女子大学大学院文学研究科修了)。互いの子どもが保育所の同級生だったことから、子育ての一時期、子どもを預けたり、預かったりして助け合いました。今も連絡を取り合い、誘い合って旅行に行くなど親交が続いています。
「働くことは最長不倒距離を競う競技」と櫻井さん。若い人が仕事を離れることを「もったいない」と感じています。「私は子育ての縁で武庫女の院に進み、そこで出会った武庫女の人たちと今につながる活動ができています。仕事は子育て等で一回二回休みがあっても構わない。最終的に長く続けることができればいいの」。
仕事を通じて出会う武庫川女子大学卒の薬剤師たちを「基礎的な能力が高い」と評価し、「一生学び続け、社会と接点を持ち続けてほしいですね」と呼びかけました。