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◇活躍する卒業生8◇山田祥子さん(食物栄養学科2005年卒)。楳茂都梅弥月とmidukiとして活躍

2022/01/11

山田さんにはいくつもの“顔”があります。上方舞「楳茂都(うめもと)流」の師範・楳茂都梅弥月として国立劇場やザ・シンフォニーホールに立ち、モダンダンサーのmidukiとして様々なアーティストとコラボする和洋2つの「アーティストの顔」。それらを後進に伝える「指導者の顔」。さらに埋もれている舞踊譜を解読するプロジェクトに取り組む「研究者の顔」。コロナ禍で多くの舞台芸能が打撃を受ける中、流派の古典を復活させようと奮闘する山田さんに話を聞きました。

 

江戸時代に発祥した楳茂都流は、振り付けの譜面である型付譜(振付)が約950点残っています(大阪歴史博物館所蔵)。舞の部分は筆字や人形の絵で描かれ、地歌が添えられていますが、忠実に再現するのは至難です。「読み解けないまま埋もれたり、当初から変化したりしている舞も多くあります」と山田さん。

 

山田さんは2017~2018年度アーツサポート関西助成金対象者に選ばれ「楳茂都流型付研究会」を発足。資料を読み解くプロジェクトを進め、長年上演されなかった作品や初演の作品を研究発表会で披露してきました。「読むだけでは曲にならないので、実際に動いてみながら、当初の舞に近づけていきます。後々まで活用できる形にするため、映像化やデジタル化を進めていますが1曲再現するのに3~4か月かかります」。

 

コロナ禍で研究会の集まりや発表の機会が制限される中でも、一人で研究を続けてきました。「当初の舞が忠実に再現できるのは楳茂都流だけ。譜を読める人がいるうちに残さなければ、埋もれて二度と復活できなくなる」という危機感が背景にあります。実際、古典芸能は上演される多くが定番の作品になりがちで、先細りが心配されています。

 

武庫川女子大学附属中高からダンスカンパニーに所属して国内外で活躍し、「芸の道」一筋に歩んできました。大学で生活環境学部食物栄養学科に進学を決めたのも、「芸を究めるうえで健康管理に役立つから」。体育祭恒例の応援合戦で応援団長を務め、持ち前の振り付けのセンスで学科を初優勝に導いたのは、いまや“伝説”です。

 

家庭では「母の顔」も加わります。コロナ禍を機に大阪で開いていたカフェを閉じ、家族で淡路島に移住しました。「夫の希望に従った形ですが、行ってみたら楽しかった!」と、島暮らしを楽しみつつ、マイカーで各地を飛び回っています。2021年12月3日には関西プレスクラブの会員交流会にゲスト出演。地歌筝曲・平曲奏者の菊央雄司さんと共演し、上方舞の代表曲である、地唄「黒髪」と「雪」を上演しました。

時折通る阪神高速道路からレンガ色の母校が見えるとき、「いつも心で手を振っているんですよ」と笑顔で話しました。

 

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