◇活躍する卒業生18◇ ナウ・マナーズ教育センター代表 藤居寿美子さん(短期大学国文科1975年3月卒)
2022/06/28
本学キャリアセンターのインターンシップ研修で長年、マナー講座をしているコミュニケーション研究家の藤居さん。実は「産業カウンセラー」の資格を持つ心理学のプロフェッショナルでもあります。今年度、キャリアセンター主催の「わたしプロデュース」で初めて、心理学を活かした講座「折れない心は自分で育てる」を実施し、自身の半生を語りました。企業の営業、ヨガ講師、劇団員――様々な経験を経てなお、「勉強したいこと、やりたいことはいっぱいある」と進化を続ける藤居さんに聞きました。
長浜市出身。飲食店を経営する両親のもと、長女として「跡取り」の重圧を背負って育ちました。武庫川女子短期大学への進学の理由は「とにかく家を出たかったから」。卒業後は実家からの「帰れコール」を振り切って洋菓子チェーン店に就職。家業で接客に慣れていたのを活かし、当時、女性では珍しかった営業職に抜擢されましたが、男性中心の職場に納得がいかず離職。実家に戻って悶々とする中、結婚式の司会をしたり、ヨガの講師をしたり、劇団員に応募して主役に抜擢されたり。「30歳まではエネルギーが体の中にとぐろを巻いているよう。興味のあることに片っ端から取り組みました」。全日本作法会に入会したのも、当初はそんな「経験」の一つでした。
マナー講師を人生の軸に定めたのは、会長のサポート役として全国を飛び回っていたころ。「君はこの仕事に向いているよ」という会長の何気ない一言でした。1984年、29歳で起業。兵庫県の警察学校や警察本部でマナー研修を手掛けたのを機に役所や企業からオファーが入るようになりました。その一方で心理学を学び、40歳代で産業カウンセラーに。現在は終活指南にも取り組みます。
短大時代、国文科の授業で「論語集注」に魅せられ、深く学んだ論語の知識が、研修や講演の題材となって今も藤居さんを支えています。「目的も定めず進学し、出世欲があったわけでもないけれど、興味と流れに従って経験を重ねたらここまで来た感じ。振り返ればすべてが必然だったと思えます」ときっぱり。様々な経験は、心理学とマナーという二つの道に整理され、今は迷いない境地かと思いきや、「まだまだ全然、整理できたわけじゃない」と大きく首を振りました。そんな藤居さんが学生たちに語ったのは、「同じ出来事でも感じ方で結果が変わる」というレジリエンスの極意。「同じ立ち位置で悩んでいても悶々とするだけ。何かをとっかかりにして立ち位置をずらせば感じ方が変わり、気持ちが楽になります。心理学の知恵もその手掛かりの一つ。自分にフィットするものを取り入れて、レジリエンス力を高めてほしい」。
コロナ禍で人と人とのかかわりが減っていることに危機感も感じています。「対面で出会ってこそ、伝わるものがある。マナーを通してコミュニケーションの大切さを丁寧に伝えていきたい」と話しました。