活躍する卒業生#48 陶芸作家 鈴木順子さん(武庫川女子大学短期大学部生活造形学科1996年卒)
2025/03/12
JR福知山線脱線事故から20年となる4月、事故で重傷を負った鈴木順子さんが宝塚市立文化芸術センターサブギャラリーで陶芸の作品展「Resilience~しなやかな回復~」を開催します。会期は4月17日~20日の4日間、10時~17時、入場無料。会場には鈴木さんが和紙に描いた「Resilience」の横断幕が掲げられ、体調が良ければ鈴木さん本人も会場で来場者を迎えます。
リハビリの一環で始めた陶芸作品約150点を展示。同じ陶芸教室で学ぶ仲間たち20人も作品を寄せます。鈴木さんにとって20年の歩みの集大成であり、陶芸作家としての新たなスタートです。
芦屋浜で母もも子さんや支援者が撮影したPRハガキは、車いすに乗った鈴木さんが直径50センチほどもある大きな絵皿の作品を手に、夕日を浴びて微笑みます。絵皿は今回の目玉の一つ。描かれたカクレクマノミは全身が見える一匹のほか、仲間の尻尾や背中が描き込まれ、順子さんを支えてきた仲間の存在を思わせます。「動物が好きなんだけど、アレルギーを気にしなければならないので最近は魚の方が好き。オレンジ色で若々しい感じに仕上げました」と鈴木さん。
事故後、2007年に母の勧めで陶芸を始めました。武庫女では生活造形学科でデザインを専門的に学び、事故前はイラストレーターとして活躍していた経験が、鈴木さんを陶芸にのめり込ませ、料理皿、絵皿、マグカップなど少しずつ作品は増えていきました。
2020年、自宅のガレージを工房にリフォームし、陶芸家・武田康明さんが主宰する「工房yas」(宝塚市)に通って本格的に作品作りに取り組むように。月1回は、自宅の工房に武田さんを招いて出前教室を開いています。教室での仲間との交流、武田さんの指導でめきめきと腕を挙げた鈴木さんに昨年、武田さんが「作品展をやろう」と持ち掛け、1年がかりで準備を進めてきました。
作品展では鈴木さんの作品を中心に、仲間たちの作品を輪が取り囲むように並べます。鈴木さん母子を送迎などで支える近所の人の作品も加わり、「鈴木順子と仲間たち」の作品展であることを表します。
この日、手がけていたのはハート型の壁掛け時計。土の違う陶板や杉板と、ハート形の平皿を組み合わせ、20年という時の流れを表現します。平らにならした土をハート形にカットする作業に苦戦しながら鈴木さんは本当に楽しそう。最近はハートをモチーフに選ぶことが多いという鈴木さん。尻尾がはねたようなものや、大きくくびれたものなど、すべてが一点ものです。「私は同じものは作れないから。でも一点一点癖があってもいいと思うんです」。
話している間も手は止まることなく、刷毛で色をつけたり、土を形作ったり。陶芸の楽しさを聞くと「作っているときも、出来上がった時も全部楽しい。割れると嫌なので使わず棚や壁に飾っています」と微笑みます。作品の裏に「JUN」や「JUNKO」と刻みながら、母や教室の仲間と冗談を言い合い、穏やかな空気が流れます。
母校の武庫川女子大学について「卒業してから『お嬢様大学』と世間一般に言われていると知って驚きました。在学中はそんな風に感じなかったから」とユーモアたっぷりに振り返り、「作品展はたくさんの人に見てほしい。武庫女の後輩たちも興味があればぜひ」と呼び掛けました。