動画ニュースで紹介。作家の伊集院静さんが「日本語のゆたかさ」について講演。学校図書館を活用する教育について考えるフォーラムが開催されました。

　学校図書館を使った教育の進め方や課題について話し合う「学校図書館活用教育フォーラム」(主催:武庫川女子大学、武庫川女子大学附属中学校、活字文化推進会議、文字・活字文化推進機構)が2月27日、中央キャンパスで行われました。抽選で選ばれた約350人の参加者が、本学附属中学校の特別授業や小学校・中学校教諭の実践報告、作家・伊集院静さんの基調講演などに熱心に耳を傾けました。
　※シンポジウムの様子は、このホームページの動画ニュースでも紹介しています。
　※シンポジウムの再録記事は、3月21日付読売新聞朝刊に掲載されます。

附属中学校の多読を主とした英語の授業を公開
　午前の部は、附属中学校の英語授業の特別視察が文学2号館で行われました=写真左=。安福勝人教諭が、スーパーイングリッシュコースで実践している多読を主とした授業を披露。中学校3年生9組43人の流ちょうな英語や辞書を使わない斬新な授業に、参加した約100人は興味深そうに参観していました。
　授業後の昼休みには本学附属図書館の見学会も実施されました。

　午後の部はメディアホールで行われ、冒頭で糸魚川直祐学長は「自分の目で見て、調べて、考える人は成長します。今日は、皆さんの話をしっかりと聴いて、活字、本という宝物が詰まっている図書館を大いに活用したいと考えています」とあいさつしました。

「読書は体の内側で解釈する特別な行い」伊集院静さんが講演
　伊集院静さん=写真中=は、友人の大リーグ・エンゼルスの松井秀喜選手が「野球をやめたら、本にかかわる仕事をしたい」と話しているというエピソードなど、本や活字にまつわるさまざまな話をユーモアたっぷりに披露。「読書は特別な行いです。テレビだと演出者が喜怒哀楽を演出し、役者が演じますが、読書はすべて自分の体の内側で解釈します。こういうことは、読書以外にはありません」と読書の効用を強調しました。

　「母国語を失うことは、民族の魂をなくすことですが、日本語は一度も迫害されたことはありません。迫害されたことがないということは、言葉として進化しているということです。だから、日本語は美しいのです」と日本語の豊かさの理由についても言及しました。
　
大阪、東出雲、西宮の先駆的な取り組みを報告
　小学校や中学校で先駆的に学校図書館を活用した教育に取り組んでいる4人の先生が実践報告。
　植田恭子・大阪市立昭和中学校教諭は「情報センターとしての学校図書館に、複数の新聞を配置することが重要です。同じ出来事でも新聞社によって、見出しや写真、本文などの扱い方が違います。子どもたちは、さまざまな表現形態を比較することにより、多様なものの見方、多面的に物事をとらえることの大切さなどを学ぶことができます」とNIE(教育に新聞を)と図書館について解説。

　門脇久美子・島根県東出雲町立揖屋小学校司書は「3年前に学校図書館司書が着任して始まった活動は、今では全校あげて図書館や本を活用した授業に発展しました。各学年の内容がつながっていくよう年間計画を作り、授業だけでなく、読み聞かせや図書館まつりなど、子どもたちが参加できる活動も多く実施しています。小学校・中学校9年間を見通したリテラシー教育体制を整えることが、島根県挙げての取り組みになっています」と地域全体で取り組んでいる状況を報告。

　高田直子・西宮市立浜脇中学校教諭は「西宮市では、学校間を回る2台のメール配送車を利用して、他の学校や公共図書館にある本を気軽に借りたり、また貸したりできる制度が整っています」、福原優子・西宮市立夙川小学校教諭は「教員の研究会である西宮市小学校教育研究会学校図書館部会を母体に、市内の学校図書館全体の質の向上を目指しています。年間7回の全体定例会を7つの地区が分担して実施しています」と地元・西宮の取り組みを紹介しました。

　この後、実践報告をした4人の先生がパネリストに、河内鏡太郎・本学客員教授(谷崎潤一郎記念館長)がコーディネーターになって、図書館を活用した教育の現状や課題などについて話し合いました=写真右=。
　
　最後に司会のたつみ都志・文学部日本語日本文学科教授は「お母さん方の言葉に関する意識は高いとは言えません。我々・大学人は、お母さんになる直前の人材を養成していますので、今日のシンポジウムのお話は真摯に受け止めました。大学をあげて、お母さん方の読書量を増やすことにつながる取り組みをしていきたいと思います」と締めくくりました。